Uberでニューヨークを動かした男が、1人でアプリを作って年間約7億円を稼いでいる

「数百人で動かした都市の次に、1人で作ったアプリが7億円を生んだ。AIが壊した壁の向こうに、ジョシュ・モアラーが見つけた"自然な限界"のリアル。」


年間収益約7億円($7M)。従業員ゼロ。サポートメールは全部、自分で返す。

ジョシュ・モアラーは今日もニューヨークのどこかで、届いたサポートメールに1通ずつ返信している。コードを書き、広告を設定し、ユーザーの声を読んで、また翌日のアップデートに反映する。会議はない。部下もいない。上司もいない。

かつてUberのニューヨークGMとして、数百人の組織を率いて約4,500億円($3B)規模の市場を作った男の、今の1日だ。組織も、会議も、投資家も、何もない。あるのはMacBookとAIだけ。

Uberの「ニューヨーク攻略」を任された男が、なぜ1人でアプリを作っているのか

ジョシュ・モアラーは2011年末、まだ誰も知らないスタートアップ「Uber」に入社した。ニューヨークの車両数はほぼゼロ。「ライドシェア」という言葉すら市民権を得ていなかった時代に、全米最大の都市でゼロからビジネスを立ち上げるGM(ゼネラルマネージャー)に就いた。

ジョシュ・モアラー

ジョシュ・モアラー

@joshmohrer

Wave AI創業者・元Uber NYCゼネラルマネージャー

x.com/joshmohrer

ドライバーの採用、規制当局との交渉、マーケティング、カスタマーサービス。すべてが彼の仕事だった。リムジンドライバーに1人ずつ声をかけ、全米で最も厳しいタクシー規制を1つずつ崩した。その結果、Uber ニューヨークは全米最大の市場に育ち、売上規模は約4,500億円($3B)に達した。数百人の組織を率いて、ニューヨークのタクシー業界を永久に変えた男だ。

だが、組織が大きくなるにつれて、喉に刺さった棘があった。「エンジニアがすべての力を持っている」——アイデアはある、ビジネスもわかる、だが実装できない。自分の手でプロダクトの細部をコントロールできない。UIのこのボタンを変えたい。この機能を追加したい。だがそれを実現するには、エンジニアチームの手が必要だった。その歯がゆさが、何年も消えなかった。

Uber退職後、ヘルステック系スタートアップを経て2022年末に「プチ引退」。そこへChatGPTが現れた。「これは自分がエンジニアになれる瞬間だ」——AIがその棘を抜いた瞬間、ジョシュ・モアラーは独学でSwiftを学び始めた。音声を録音して、文字起こしして、要約する。そのシンプルなアイデアのMVPを、たった1日で完成させた。

そこから3年。音声メモアプリ「Wave」は、年間約7億円の収益を叩き出している。1人で。サポートメールは自分で返す。コードも自分で書く。広告も自分で回す。従業員はゼロ。カスタマーサポートを外部委託するつもりもない。ユーザーの声を直接聞くことが、翌日のアップデートに直結する。この男は、約4,500億円の組織を動かした後に、1人でメールに返信する日々を選んだのだ。

この記事では、Uber幹部が「1人のアプリ開発者」に転身した全プロセスを追う。高校生でeBayに物を売っていた少年が、Uberのニューヨーク市場をゼロから作り、その後すべてを手放した経緯。20個のアイデアを潰して1つだけが生き残った試行錯誤。ペイウォールのA/Bテストで収益を最適化し続ける仕組み。ChatGPTを使った「非エンジニアのアプリ開発」の具体的な方法論。そしてARR約7億円を1人で維持する日常の全貌——ここからは、その全てを分解する。