従業員ゼロ。会議ゼロ。維持費は月約1.4万円。「デザインが上手い」だけでは、この数字には届かなかった。
アリゾナ州サン・シティ。静かな住宅街の自宅から、世界30社以上のブランドデザインを動かしている男がいる。
ブレット・ウィリアムスの月間経常収益(MRR)は約2,100万円($145,000)。年間の合計売上は約3億円($2.1M)を超える。従業員はゼロ。外注もゼロ。月の維持コストは約1.4万円($95)。Trello、Stripe、シンプルなウェブサイト。使っているツールはそれだけだ。
彼は「世界一デザインが上手い人」ではない。彼が見つけたのは、デザインの届け方を変える仕組みだった。これは才能の話じゃない。設計の話だ。デザインの「腕」ではなく、デザインの「届け方」を変えたことで、収入の桁が変わった。
ブレット・ウィリアムス
@BrettFromDJ
DesignJoy創業者・プロダクトデザイナー
x.com/BrettFromDJ →
アメリカ・アリゾナ州サン・シティ在住。UX/UIデザイナーとして企業に勤めていたが、2017年に副業として「DesignJoy」を立ち上げた。3年半、副業のまま育てた。月収約1,200万円($80,000)を超えても辞めなかった。退職後は1人で運営を続け、2024年時点でMRR約2,100万円($145,000)に到達。

designjoy.co
DesignJoy
月額制デザインサービス。ブランディング・プロダクトデザインを月額固定で提供
designjoy.co →
X(旧Twitter)のフォロワーは15万人を超える。LinkedInのプロフィールには一文だけ書いてある。「Running a $100k/m one-man design agency.(月収1,500万円の一人デザイン事務所を動かしている)」。肩書きもない。会社名もない。やっていることだけが、静かに並んでいる。
ブレット・ウィリアムスは、デザインが嫌いだったわけじゃない。むしろ好きだった。嫌だったのは、デザインの「届け方」だった。
企業に勤めていた頃、彼の1日はこうだった。会議に出る。クライアントと交渉する。見積もりを出す。承認を待つ。修正する。もう一度承認を待つ。デザインをしている時間より、デザイン以外のことに使っている時間の方が長かった。
「ミーティングは気が散る。全部非同期でできる。」
この言葉には、何年分もの苛立ちが詰まっている。会議、電話、スプレッドシート、承認フロー。会社員デザイナーの日常は、デザインの周辺作業で埋め尽くされている。ブレット・ウィリアムスが渇望していたのは「デザインだけに集中できる環境」だった。でもそれは、会社の中では手に入らない。
レイオフの噂が社内に流れていた。不安定な雇用。退屈な仕事。デザインへの集中を阻む構造。この3つが重なったとき、ブレット・ウィリアムスの頭の中にあるサービスの名前が浮かんだ。
ここで少し立ち止まりたい。「退屈」という感情は、多くの場合ネガティブなものとして扱われる。でもブレット・ウィリアムスの場合、退屈は設計の欠陥を知覚するセンサーだった。「この仕事のやり方は間違っている」という直感が、退屈の正体だった。彼はその退屈を解決するために、仕事そのものを再設計した。
デザイン業界の構造的な問題は、実は多くの専門職に共通している。弁護士も、コンサルタントも、エンジニアも、「専門的な作業をしている時間」よりも「周辺業務に費やす時間」の方が長い。ミーティング、報告、根回し、承認待ち。ブレット・ウィリアムスが感じた苛立ちは、多くのプロフェッショナルが無意識に受け入れている構造的な非効率への反発だった。
ダモン・チェンも同じ構造から抜け出した1人だ。Ciscoのエンジニアを辞めて、1人でSaaSを月商1,000万円まで育てた。「個人がツールの力で企業と同じ土俵に立つ」時代が来ている。
NEWDOT
Ciscoを辞めた男が、1人で月商1,000万円のSaaSを作った
Damon Chenは、レビュー収集ツールTestimonial.toを1人で運営し、月$60K以上を稼いでいる。
newdot.app/p/damon-chen-testimonial →
2017年の夏。ブレット・ウィリアムスは「デザイン・ピックル」というサービスを見つけた。グラフィックデザインを月額サブスクリプションで提供する会社だ。
頭に浮かんだ問いは1つ。「これを、ブランディングやプロダクトデザインの領域でやってる人はいるか?」答えは明快だった。誰もいない。
ここが、2017年という時代が彼に与えたチャンスだ。SaaS(Software as a Service)が爆発的に普及した時期だった。Notion、Figma、Slack——月額固定で使えるツールに、世界中の人が慣れ始めていた。「月額いくらで、決まったサービスが使い放題」という体験が当たり前になっていた。
でもデザイン業界は違った。依然として「1プロジェクトごとの見積もり、交渉、納品」が主流だった。クライアントは予算が読めない。デザイナーは営業に時間を取られる。両方が不満を抱えていた。
ブレット・ウィリアムスが見つけたのは、ソフトウェアの世界で起きていた「月額制革命」を、デザインに持ち込むという発想だった。しかも、低単価のグラフィックデザインではなく、月額約22万円〜約75万円($1,500〜$5,000)のプレミアム帯で。
金曜の夜にサイトを作った。土曜にProduct Huntで公開した。日曜には最初の顧客がついた。48時間。アイデアから最初の顧客まで、たった48時間。
ここで「48時間」という数字に注目したい。ブレット・ウィリアムスは完璧なサイトを作ったわけじゃない。最低限のランディングページと、Stripeの決済リンクだけだ。ロゴも凝ってなかった。コピーも短かった。でもそれで十分だった。「月額固定でプロダクトデザインが依頼し放題」という